【Studies】3Dプリンターのアップグレード

こんにちは、デジタルファブリケーション協会の井上です。

コロナの影響も手伝ってか、個人で3Dプリンターを購入する方が増えているという話を聞きます。最近は紙のプリンターとほとんど変わらないような金額で買えてしまうので、ちょっと興味があるという人でも気軽にチャレンジできるようになりました。かく言う筆者も、コロナによる在宅勤務を機に自宅用の3Dプリンターを購入し、レビューしました。

Creality CR-10 V2導入レポート(機種選定)
Creality CR-10 V2導入レポート(購入からセットアップ)
Creality CR-10 V2導入レポート(レビュー)

購入から2年近い月日が経ち、機材のアップグレードが溜まってきたので紹介したいと思います。比較的新しいアップグレードもあるので、詳しいレビューは別途レポートします。

Bondtech CHT Nozzle

Bondtech社製のCHT Nozzleは、筆者もよく見るYoutubeチャンネル「CNC Kitchen」で紹介されているのを見て興味をもったアップグレードノズルです。簡単に説明すると、ノズル内部が三又に分かれていることで熱の伝達効率が向上し、フィラメントの流量を上げることができる、というものです。印刷スピードを上げたり、口径が大きいノズルでも安定して送り出すことができるとされています。筆者は口径0.6、0.8、1.0、1.4、1.8(mm)の5点セットを購入しました。フィラメント(1.75mm)よりも太い1.8mmノズルはなかなか強烈でした(造形中は凄まじい勢いで材料を消費します)。

Bondtech DDX Direct Drive Extruder + Mosquito Hotend

せっかくノズルを変えるならばと、より加熱効率の高いホットエンド、さらにTPUなどの軟質フィラメントにも対応できるようダイレクトドライブ式に代えてしまおうということで、上述のノズルと合わせてエクストルーダーとホットエンドもアップグレードしました。Bondtech社のDDXは、型は少し古いですがコンパクトなダイレクトドライブ式のエクストルーダーです。同社新型のLDXや、E3D社製のHemeraなども候補に挙がりましたが、CR-10 V2用のアタッチメントキットがあり、アップグレードのしやすさからこちらを選びました。デュアルドライブなのでフィラメントを両側からしっかり掴んで送り出すことができます。DDX本体やアタッチメントには粉末焼結された3Dプリントパーツ(ナイロン)が随所に使われています。

Slice Enginieering社のMosquito Hontendは、ノズル詰まりや造形不良の原因となる「ヒート・クリープ」を抑えるよう設計されたプロフェッショナル仕様のホットエンドです。CR-10 V2に付属するホットエンドに不満があったわけではなく、これまでも綺麗に造形できていました。多くのユーザーが指摘している点ですが、実用面では「ノズル交換のしやすさ」が大きなメリットです。メーカーサイトの「片手でできる」という記載の通り、レンチでヒートブロックを抑えながら行う必要はありません。これまではホットエンドを壊さないように、ノズル交換は慎重に行う必要があり、地味なストレスでした。筆者のように目的に合わせてノズルを交換して遊ぶような使い方をするユーザーには魅力的なアップグレードになりました。

PEI磁気ビルドプレート

3Dプリンターが市場に出回るようになってから、ガラスや金属といった素材面だけでなく、マスキングテープやスティックのり、ヘアスプレーを塗布するといった工夫まで、様々なビルドプレートが試されてきました。PEI磁気ビルドプレートは比較的新しいタイプのビルドプレートで、評判も上々です。CR-10 V2に付属するガラスプレートも悪くはなかったですが、造形物が強く付きすぎてしまった場合に苦労しました。プレートをたわませれば造形物を簡単に取り外せるので重宝しています。

購入したHICTOP社製のPEIプレートは表面が粗い梨地となっており、造形物の底面にテクスチャーが写ります。この辺りは好みが分かれるところですが、個人的には気に入っています。

ダイヤルゲージ+自作アタッチメント

造形を成功させるにあたってキャリブレーションはとても重要な下準備です。しかし、これまでは「ノズルとテーブルの間に紙を挟んで引っかかる程度」と酷く感覚的に行ってきました。厄介なのはその感覚をテーブル上の何点かで揃えなければならないため、気持ち悪さを拭いきれませんでした。ダイヤルゲージを用いる様になってからは、少なくとも1箇所での感覚を基準に、各ポイントを数値で揃えることができる様になりました。おかげで1層目を観察してもムラなくプリントできる様になりました。

とはいえ既にBL Touchなどのオートレベリング用のアタッチメントも普及しているので、自分で状態を整えるのと、機械任せにするのとどちらがいいかは考えどころです。

RaspberryPi + OctoPi

RaspberryPiとOctoPiのセットは、3Dプリンターユーザーにはおなじみのアップデートです。ローカルネットワークに繋ぐことで、SDカードを通すことなく出力ファイルを送ったり、プリンターの状態をモニターすることができます。Webブラウザから操作できるので、最近はスマホやiPadをコントローラーがわりにしてキャリブレーションをしています。

また最近Raise Cloudに繋げたことで、外部からでも自宅の3Dプリンターを操作したり、モニターできる様になりました。OctoPrint側にRaise Cloudのプラグインを入れるだけで繋ぐことができ、非常に簡単でした。

まとめ

こうしたアップグレードは完全にDIYの世界なので、全てのユーザーに勧められるものではありません。失敗したり、思った様な効果が得られないこともしばしばあります。それでもこういった手間をかけて、アップグレードしながら長い目で3Dプリンターを楽しみたいという方は、以下の条件で3Dプリンターを選んでみると良いと思います。

  1. ユーザーが多い(参照事例が多く、カスタムパーツが豊富)
  2. 改造しやすい構造(筐体があるものより、むき出しのもの)

近年の例だと、Creality社のEnder3シリーズやCR-10シリーズ、Prusa ResearchのPrusa i3あたりが楽しめる機種でしょうか。こうしたカスタムアップグレードを気軽に楽しめるのは、3Dプリンターならではかもしれません。3Dプリンターを少しディープに楽しみたい方は、ぜひアップグレードにチャレンジしてみてください。

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 3 )
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  1. By imahori

    このシリーズを拝見してCR-10V2を1年前に購入しました。今回も興味深く拝見しておりました。特にエクストルーダーとホットエンドのグレードアップの詳細をもう少し知りたいのですが、導入の参考になるサイト等他にもありましたらご教示頂きたいです。個人的なことで恐縮ですが、私の機種は個体差なのか6時間等の長時間使用しているとフィラメントを送れなくなり、原因を模索しているところです。もし熱の問題であれば、例えば今回紹介されたホットエンドだけの採用などもありなのかと悩んでいます。

    • By info@digifab.or.jp

      imahori様
      コメントありがとうございます!筆者の場合は、まず「CHT Nozzleを使いたい」というところからスタートして、そこからヒートエンドのアップグレードを決断しました。送料を抑えるため、できるだけ同じところからパーツを揃えようと思い、CHT Nozzleを開発しているBondtechのサイトから全て購入しました。ノズル以外でCR-10 V2用に購入したのは、
      https://www.bondtech.se/product/bondtech-ddx-v3-for-creality/
      https://www.bondtech.se/product/ddx-v3-adapter-set-for-cr-10-v2-v3/
      https://www.bondtech.se/product/ddx-ph3-mosquito-upgrade/
      の3点です。
      この記事も日本語で書かれたアップグレード系の情報があまり無いから取り上げたところがあるので、参考にしたのはほぼ海外のサイトです。同じ組み合わせで上げている動画がなかったので、いくつかの動画を見比べながら作業しました。





      今月中にアップグレードした後の所感を取り上げようと思うので、引き続きご覧いただけたら幸いです。頑張ってください!

  2. By imahori

    早速にご回答頂きありがとうございます!実証された貴重な情報と感じました。今後の記事も楽しみにしております♪

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