特殊紙をレーザー加工する – バルカナイズドファイバーでコインケース作り –
Fab施設で3Dプリンターと並んで普及し、データ作成も比較的容易なレーザーカッター。基本的には平面での加工に限定されるため、立体物をつくる場合も、複数パーツを組み合わせて制作することが多いのでは無いでしょうか。
今回は、一枚の素材だけを使って、曲げ加工を施して組み立てたコインケースを作りました。その図面の作成や組み立ての方法を、コツを交えながら紹介します。
素材紹介
使用した素材は電気機器の絶縁体や溶接マスク、プラスチック普及前の日用品にも使われていた特殊紙「バルカナイズドファイバー」です。アクリルや木材よりもレーザー加工が容易でありながら、一般的な厚紙などよりも強靭で形を保ちやすいという性質があります。
図面作成
データ作成にはAdobe Illustratorを使用しました。図面を作る際、左右対称に設計してしまうと、折り曲げたときに、紙の厚みでうまくおさまらない部分が出てきます。紙が重なり合う箇所は、素材の厚みに合わせて寸法を微調整したり、干渉しないように変形させたりしました。
また、ボタンを取り付ける穴のサイズをピッタリよりも若干小さくすることで、接着剤で固定しなくても、ボタンがしっかりと保持されるように工夫しました。
切り出し
レーザー加工機には、レーザー光線が貫通しやすいよう、穴の開いたハニカムテーブルがセットされていることが多いです。
バルカナイズドファイバーは木材以上に反りが発生しやすく、ハニカム上ではテープ留めなども難しいため、このハニカムテーブルを外して加工を行います。
四辺や裏面を両面テープやマスキングテープでしっかり固定し、折り曲げる部分の彫刻加工と、切り出しを行います。
加工後は、切断面にベタつきや焦げが発生します。ウェットティッシュで拭いたり、水で軽く洗うことをオススメします。
組み立て
バルカナイズドファイバーは水に濡れると柔らかくなる性質があります。
レーザー彫刻を施した箇所が濡れるように水に浸したり、濡れた布などで湿らせます。(極端に湿らせすぎると形が歪んでしまうため注意が必要です。)
柔らかくなったら、彫刻のラインに合わせて数回に分けて折り曲げます。一回で無理に曲げようとすると表面が割れてしまうため、様子を見ながら慎重に作業します。
ある程度形が整ったら、レザークラフト用の金具を取り付けます。(記事内ではバネホックを使用しています。)
金具の取り付けが完了したら、最後に革紐をケース上部の穴に通します。
完成
雰囲気よく仕上がりました!赤みがかった色合いがレザーのようにも見えます。硬く厚みのある素材なのでホックの開閉時にも安定感があります。金具がつくことで、紙という素材ながら高級感が出たように感じます。
バルカナイズドファイバーを加工してみて
バルカナイズドファイバーという素材自体は知っていましたが、レーザーカッターで加工するのは初めてでした。
本来の用途は、絶縁体や溶接マスクといった工業的なものが主流な素材ですが、レーザーカッターで加工してみるととても扱いやすく、さまざまな小物づくりに重宝しそうだと感じました。
水に濡らすと曲がるという性質のため、立体的な形状を作る際にも複数パーツの接着や縫い合わせ作業が不要で、簡単に組み立てられる設計ができました。接着剤や溶剤を使用した加工に比べてハードルが低く、準備や片付けも容易です。
工夫次第でまだまだ活用方法がありそうなバルカナイズドファイバー、皆さんもレーザー加工を用いたものづくりに使ってみてはいかがでしょうか。