【Studies】アクリルの透明感をコントロールする

こんにちは、デジタルファブリケーション協会の井上です。
デジタルファブリケーションStudiesの第4弾をお送りします。

今回はデジタルファブリケーションではお馴染みの「アクリル板」を使った実験についてです。
レーザーカッターで加工しやすい・厚みや色のバリエーションが多い・入手しやすいなどの理由から、おそらくどのメイカースペースでも多く使われている素材じゃないかと思います。中でも透明アクリルは使い勝手も良く、他のプラスチックと比べて高い透明度を誇ります。レーザーカッターで形を作ってからUVプリンターで印刷するといったプロセスは、看板やPOP製作に最適です。

厚みや色のバリエーションが多い便利なアクリルですが、残念ながら「透明度」に関してはあまり選択肢がありません。一般的に売られているアクリル板でも、「透明」、「乳半(商品名によってはオパールなど)」、「不透明」ぐらいしかありません。そこで、UVプリンターを使って擬似的に透明度をコントロールする実験をしてみました。

UVプリンターは、プリントしたインクをUV=紫外線で硬化・定着させるプリンターです。紙のプリンターど同じくCMYKの基本色のほか、ホワイト、クリア、プライマーを特色として扱うことができます。プライマーは、プラスチックや金属、ガラスや陶器など、塗膜の接着力を上げるための下地材です。これらの特色を用いるには、特色を載せたい部分を塗りつぶした版データが必要になります。その版データから当てたい特色を選ぶ際に、濃度を指定することができます。この濃度パラメータから透明度を調整するやり方です。

上の写真は、2mm厚の透明なアクリル片に「FabLab KandaNishikicho」のロゴと合わせてホワイトの濃度を変えてプリントしたものです。上から0%、1%、2%、3%、4%、5%の順に並んでいます。黒い背景に対して、徐々に不透明になっていくのがわかります。左はプライマーあり、右はプライマーなしです。数値の上では1%ずつ変えているだけですが、実際の見た目は数値ほどリニアなグラデーションになっていません。特に0%から1%、2%から3%への変化でギャップがやや大きくなった様に見えます。逆に4%から5%の間ではほとんど変化が見られません。残念ながら小数点以下の数値では制御できないので、これ以上細かく見ていくことはできませんが、擬似的とはいえ既製品のアクリルでは出せない微妙な透明感が演出できます。

少し寄ってみると、透明に近づくに連れてプライマーの粒感が目立ってきます。また、ほんのわずかですが、プライマーありの方が黄色みを帯びている様にも見えます。アクリルはインクが定着しにくい素材なので、塗膜が剥がれない様にプライマーをかけるのが通常のやり方です。ただし、例えば看板の様にあまり手を触れない様な用途であれば、プライマーなしの方が綺麗な見た目になるかもしれません。

木目の様に背景がテクスチャをもつ様になると、また見え方も変わってきます。黒い背景ではかなり白く見えた5%ホワイトでも、背景によってはもっと白を濃くしてもいいと感じる場合もありそうです(ちなみに1枚目の写真のPOPはホワイト10%で印刷しています)。このあたりは、実際の用途や使用する環境などと照らし合わせながら、希望する透明感を見つけていくのが良さそうです。

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