レーザー加工検証-MDFの種類によるカットパラメータの違い-

レーザーカッターを使う上で、MDF(中質繊維板)はよく使われている材料です。木材の中では比較的安価で、反りなども出にくく、強度も適度にあり、レーザー加工を用いたものづくりの素材として一般的です。

しかし、「MDF」とひとくちに言っても、実はその購入元(製造元)などによって材質特性が異なることをご存知ですか?

MDFは木材チップに接着剤を加えて固めて作られています。その製法はJIS規格によって定められてはいますが、購入した製品の詳細について知ることが難しい場合もあります。原料となっている木材や、接着剤の種類、密度が異なると、レーザーカット時の切れ味や彫刻の結果も変わってきます。
しかし大抵の場合、レーザーカッターでのMDFの加工パラメータ設定は、厚み2.5mmの時には●●、といった厚みによる認識になっていることが多いのではないでしょうか。

最近では、100円ショップでもMDFが販売されるようになりました。
100円ショップが身近にあることや、ホームセンターに比べて安価で手に入ること等から、私たちが運営をお手伝いしている工房でも、100均MDFを使用しているユーザーが多いように感じます。
そこで今回は、街の「材木屋」で購入したMDFと、100円ショップ「DAISO」「Seria」のMDFを同じ加工パラメータでカットする実験をしてみました。

カットに使用する機器は、trotec Speedy100です。(検証時のW数は30W程度)

検証

まずは、材木屋で購入したMDF5.5mm厚で実験します。
カット強さは、P(パワー)は全て100%、V(ヘッドの動くスピード)を左から0.5%、0.4%、0.3%と少しずつ遅くしています。カット回数は全て1回です。
【加工結果】

表面
裏面

V0.3%はカットしてテーブルから取り上げた際にスッと落ちる程度にしっかりと切り抜けました。V0.4%は、おおむね切り抜けているため、カット後に手でグッと押したところカットしたパーツが外れました。V0.5%は裏面に全くカットが届いておらず、切り抜けていませんでした。


次に、DAISOで購入したMDF6mm
【加工結果】

表面
裏面

カット結果は、厚み6mmにも関わらず、先ほどの材木屋の5.5mm厚のMDFより切り抜けた部分が多くなりました。V0.5%でも裏面から見るとおおむね切り抜けており、手で押すとパーツが外れます。MDF自体、触ってみると中身がそんなに詰まっていないような軽い印象を受けます。


最後は、Seriaで購入したMDF5mm
【加工結果】

表面
裏面

カット結果はこの通り、材木屋やDAISOのMDFより厚みが薄いにも関わらず、全く切り抜けていません。裏側から見ると、V0.3%でのカット部分のみうっすらと線が見えるところもありますが、手で押してもびくともしません。触った感じも他のMDF材と比べ表面がすべすべしており、やや重めで密度が高いように感じます。
文字の彫刻部分に関しては、他のMDFに比べ黒くはっきりと見えます。

全く切り抜けなかったため、V0.2%まで遅くしてのカットも試みましたが、カット中にずっとろうそく程度の炎が上がり、カット断面も黒焦げになってしまったため、危険性を鑑みて検証を中断しました。

【カット回数の検証】
SeriaMDFでは、カット回数の実験もしてみました。以下はV0.6%の速さでカットした検証です。
左は1回、真ん中は2回カットしました。一番右は、1回目のカットののち、2回目は材料を2mmヘッドに近づけてカットしました。これは、1回目のカットでおそらく切れているであろう高さまでヘッドを近づけることで、レーザー光線の焦点距離をカットしたい高さに合わせる目的です。

カット結果は、2回目に材料を2mmヘッドに近づけた右端のカットのみ切り抜けました。裏面から見ても、ただ2回カットしたものと比べ、しっかりとレーザーが裏面に届いていることがわかります。
より速いスピードでカットすることができましたが、加工時間は2回カット&高さ調整の時間もあり、2倍以上になります。また、MDFなどの木材は2度カットすると断面が黒焦げになってしまうため、できれば1度で切り抜ける設定で使用したいところです。

2回カットすると断面が真っ黒になってしまった。表面が汚れないようしっかり拭き取りをする必要がある

検証のまとめ

このようにMDFは、購入元(製造元)ごとに材質特性が大きく異なってくるため、厚みのみに注目した加工パラメータをストック・使用していると、なぜか切り抜けない材料が出てきたり、切り抜けず材料に熱が溜まってしまい加工部から火が出たり、逆に強い力をかけすぎて材料や機器に負担をかけたり、思わぬトラブルを招くことがありそうです。
MDFに限らずどんな材料を使う場合でも、使用するレーザー加工機の状態や、カットする材料に合った加工パラメータを毎回チェックして、本番の加工に入る前にしっかりと検証することが大切ですね。