Creality CR-10 V2導入レポート(機種選定)

こんにちは、ファブラボ神田錦町の井上です。

コロナウイルス騒動が長引くなか、多くの方と同様に家で大人しくする日々が続いています。ポストコロナでは様々な変化が余儀なくされると言われるなか、「じゃあどうする?」と頭を捻る毎日です。手を動かしながら考えることができないのは流石に辛いということで、ファブラボ歴8年目にして初のマイ3Dプリンターを購入しました。プリンターの選び方から設置まで、導入に悩んでいる方の参考になれば幸いです。

機種選定

結論から書くと、最終的に「Creality CR-10 V2」という機種を選びました。8年間のファブラボ運営の経験を通じて人並み以上に詳しくなると、それはそれで悩ましいものでした。あくまで井上の場合ですが、どのようなプロセスでCreality CR-10 V2に至ったかを紹介します。

Creality CR-10

3Dプリンターに求めた要件(優先順位順・井上の場合)

  1. 仕事で使える(ある程度の精度が安定して出せる)
  2. レファレンスの量(トラブルシューティングのしやすさ)
  3. CuraやSimplify3Dに対応している(レファレンス量と設定項目の豊かさ)
  4. 造形エリア(ラボのプリンターより少し大きめの造形エリア)
  5. 工夫・改造のしやすさ(オープンフレームでシンプルな構造)
  6. 導入事例が少ない(レポーティングのネタとして)
  7. コスト

ファブラボを運営している以上、まずはそこに活かせる機種であることが最優先でした。要件1〜6は全て当てはまりますが、もう少し噛み砕いていきます。家庭用のFDM式3Dプリンターの場合、正直に言って「カタログ上の精度」はあまりアテにならないということを経験的に知っています。これはメーカーが悪いということではなく、ユーザー側のプリントセッティングやメンテナンスの影響がとても大きいため、カタログ上の精度で出せるかどうかがそもそも自分次第、という意味です。だからこそ「レファレンスの量」が重要になってきます。Crealityの、特にCR-10とEnderの両シリーズは世界中にユーザーがいて、様々なオンラインレファレンスがあります(英語が大半ですが)。またユーザーが多いということは、それだけ「工夫・改造」の面でも様々なチャレンジ事例があり、サードパーティー製のパーツも豊富にあります。アルミフレームを組んだだけのシンプルな構造なので、必要に応じて改造しやすいアクセス性の良さも魅力的でした。

Creality CR-10

Creality Ender3

CuraやSimplify3Dは「スライサーソフト」といって、プリンターが読める形式に3Dデータを変換するためのソフトウェアです。プリンター本体だけではなく、このスライサーソフトもプリント品質に大きく影響を与えます。Cura(無料)もSimplify3D(有料)も多くのユーザーがおり、評判・レファレンス量ともに申し分ありません。この点は紙のプリンターを選ぶ際にドライバーソフトを気にすることがあまり無い様に、見落とされやすいポイントです。必ずしもメーカー純正のスライサーソフトが劣っているということではありませんが、玄人向けではあるものの設定項目が豊富な両ソフトは、ヘビーユーザーにはありがたいソフトです。特に近年は付加価値をつけた特殊フィラメントの開発が盛んで、それらのクセのあるフィラメントを今後扱うケースが出てきた時に、設定項目が多い方が対応しやすいというメリットがあります。

Cura

無料

Simplify 3D

有料

造形エリアは完全に井上の場合で、必ずしも大きい方がいいとも限りません。Creality CR-10 V2の造形エリアは300x300x400(mm)ですが、200x200x200くらいの方がメンテナンスもしやすく、家の中に置きやすいサイズ感かと思います。もしラボのプリンターで出力できない様な事案が出た場合にサポートできる様な機種として、少し大きいものを選びました。

「導入事例の少なさ」は、一見レファレンスの量と相反しますが、少なそうだったのは昨年10月頃にリリースされたばかりの”V2″の方で、CR-10やCR-10sなどの過去のモデルは多くのユーザーがいます。日進月歩の業界なので、CR-10やCR-10sのレファレンスを上手く活用しつつ、各所アップデートされている(であろう)最新版を選ぶ形をとりました。国内でも導入事例は少なそうだったので、こうしたレビューにも活かしていこうという魂胆です。

最後にコストです。優先順位順と書いた通り、コストのプライオリティはあえて低く考えました。結局のところ、要件1〜6をできる限り満たすことで稼働率を上げた方が、経済的にも心象的にも早く回収できるだろう、という考え方です。もちろん無い袖は振れないので、要件1~6を満たしている機種からバランスをとりつつ、最後は「勘」のひと押しでCreality CR-10 V2という結論になりました。

数え切れないほどの機種の中から、自分が買う3Dプリンターを選ぶのは楽しくも悩ましいところです。届いたばかりのCR-10 V2は組み立てもスムーズに終わり、おなじみの3D Benchyの出力が終わったばかりですが、既に「いい買い物だった」と言えます。とはいえ誰にでも、どんなニーズにでも勧められるかというと、そうではありません。3Dプリントにまだ不慣れな人は、日本語のレファレンスや保証がしっかりした機種を選ぶ方がいいかもしれません。練習と割り切って安い機種から始めるのもアリでしょう。業務用途に特化するならUltimakerやRaise 3D、Infinity 3DPなども強力な候補ですし、教育現場で子供に使わせるのなら安全面や扱いやすさを重視する見方もあります。井上の場合でCreality CR-10 V2が良かったのは、「業務用途にも使える程度にしっかりしている」点と、「工夫や改造を行う余地がある(=ハッカブルである)」という2点のバランスがちょうど良かったというところに落ち着くと思います。

次回はCreality CR-10 V2のセットアップ編です。お楽しみに!

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