イベントレポート | Bali Fab Fest 前編

こんにちは。初めまして。
10月にインドネシア バリ島で11日間開催された、「Bali Fab Fest」(以下ファブフェス)に特派員として参加した糸見啓介と申します。
ファブフェスがどのようなイベントだったのかを、2本の記事にわたってレポートします。
この記事を読んでいただいた方に、よりファブフェスやデジタルファブリケーションについて知ってもらおうと有意義な内容にしたいところですが、検索してもらった方がより正確に、多くの情報が出てきます。堅い内容は諦めて自分が体験・体感したことを素直に書いていきたいと思います。

参考リンク↓
イベント情報「ファブラボ世界会議 “Bali Fab Fest” 開催」
Bali Fab Festオフィシャルサイト

1.なんで私がバリに。

私は神奈川県に3つのキャンパスを構える神奈川大学の学部4年生です。
私が通うみなとみらいのキャンパスには文系の学部しかありません。しかしそんなキャンパスに、デジタルファブリケーション機器を備えた”ほぼなんでも作れる施設”「FabLab みなとみらい」があります。「なんで文系の学部のキャンパスに!?」と9割の方に驚かれます。
このFabLabにはゼミのプロジェクトを進めるために利用する学生や、個人の趣味でフラッと立ち寄ってモノづくりをする学生、曜日によってはたくさんの一般の方がいらっしゃいます。私はその「fabLabみなとみらい」や、SONYの本社1階にあるデジタル設備を備えたオープンラウンジ「Creative Lounge」でスタッフをしています。
ではなぜ、私がファブフェスに参加することになったのか。先述した通り、私は大学4年生です。この時期になると、だいたい周りは就活をしているor終えている人ばかりです。
私も今年の2,3月頃に就活をしていましたが、なかなか上手くいかず、思い切って5,6月の2か月を使ってヨーロッパを回ってきました。ヨーロッパから帰り、体験してきた話をしていたら、そこで思わぬ話が飛び込んできました。
「今度はバリに行かない?」
毎年世界のどこかで開催されているファブフェスという存在をそもそも知らなかったのですが、今年はあのリゾート地で有名なバリ島で開催されるということで、外国帰りホヤホヤで気分が高揚している私にとっては打ってつけのお話でした。

2.ファブフェスでの任務

ファブフェス開催期間中の11日間、会場では至るところで講義やワークショップが常に開催されています。私の任務は講義やワークショップに参加し、その主催者や参加者が考えているのはどういうことか、何を念頭にデジファブに関わっているか調査することでした。
まず初めに、ファブフェスのシンポジウムで印象に残ったフレーズをご紹介します。
“How can almost anybody can make almost anything”
“どのようにしてほぼすべての人がほぼ何でも作るか”
マサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド氏の言葉です。
現在FabLabでは“How to make (Almost) anything” “どのようにして(ほぼ)何でも作るか”というテーマの下、世界中でものづくりが行われていましたが、ニール氏は次のフェーズに移る時期だと考えていました。

それではここからこのキーワードをもとに、参加したワークショップをご紹介していきます。

3.ワークショップ

「MUSIC MAKERS」

アフリカの楽器である「カズー」と、塩ビパイプなどを3Dプリントしたパーツでつなげて楽器を作るワークショップです。
楽器を作ったあとは、4班ぐらいに分かれて全員で演奏会を行いました。
このワークショップの主催者の方には「音楽パフォーマンスに”観客”として参加するのではなく、メーカー、クリエイター、プレイヤーとして参加してほしい」という想いがあったそうです。英語がなかなか通用しなかった私ですが、楽器作りや演奏というプロセスを通じて、ボーダーレスに楽しめました。

「HOW TO (RE)DESIGN A CIRCULAR PRODUCT」

既存の製品に使われている素材を改めて見直してみるというワークショップです。素材がどのように製造・使用・廃棄されているのか、素材の新たな利用方法はないか?とグループ毎にディスカッションを行いました。
私たちの班では”タイヤ”にフォーカスをあててディスカッションを行いました。特に印象的だったのは、廃タイヤを利用して「知育玩具用のミニタイヤ」を作り直すことや、削られたタイヤの層に”新たなゴムの層”を貼り合わせることで再利用するという意見でした。
国籍も世代もバラバラな人たちが集まって議論すると、自分では思いもしなかったアイデアがどんどん出てきて、非常に有意義な時間となりました。

単一の素材(ウィートストロー)で作られたボールペン

「IMPLEMENTING  DIGITAL  FABRICATION  ON  TRADITONAL FABRIC(BATIK)  TOWARDS  TO  SUSTAINABILITY」

伝統文化にデジタルファブリケーションを取り入れるワークショップです。
インドネシアには”バティック”という、ユネスコ無形文化遺産や国宝にも指定されている伝統的な布の染色技法があります。日本でいう「蝋(ろう)けつ染め」です。金属製のスタンプに溶かした蝋をつけ、布地に押して模様を描きます。天然染料で布を染色すると、蝋をつけた部分だけが染まらず白く残り、スタンプした模様が浮かび上がります。

今回のワークショップでは、金属製ではなく3Dプリントしたスタンプを使って布地に模様を描きました。スタンプを3Dプリントすることで金属製のものより重量も軽く、さらにスタンプ自体の製造も素早く容易にできることから、より多くの人が多様なデザインに次々とトライできるようになるのではないかと感じました。

熱で溶けた蝋はすぐに硬化してしまうため作業に素早さが求められたり、適切な量の蝋をつけないと綺麗にスタンプができなかったりと、想像以上に繊細さが求められる作業でした。現地の職人さんのような綺麗な模様は描けませんでしたが、思い出に残る作品が仕上がりました。
伝統文化×デジファブというコラボレーションにより、地域特有の文化を活かしつつ、誰でも親しみやすい形で利用できるアイテムを制作されており、非常に興味深いワークショップでした。

前編はここまでです。
後日公開予定の後編でも参加したワークショップについてご紹介しますのでぜひご覧ください。