【Studies】ShopBotによる組み立て家具設計のコツ

こんにちは、ファブラボ神田錦町の井上です。

先日出展した「EDIX教育総合展」では、昨年に開講した広島工業大学高校K-STEAM類型CLコースから生まれた学生さんの作品例なども並び、現場で実際に使われている機材と併せて展示会場を構成しました。実は機材や作品例を並べていたテーブルやスツール・展示台も、広島工業大学高校にあるShopBotで制作されています。機材と会場設備以外のほぼ全てを、デジタルファブリケーションで形にした会場になっています。今回のStudiesでは、展示会で使用した什器類を参考に、ShopBotによる組み立て家具の設計のコツを紹介します。家具や什器の設計は、載せるものの想定によっては高い経験とスキルを要します。人が立ったり座ったりするような什器なら尚更です。「デザインのノウハウ」まで広げてしまうと広範になりすぎるので、ShopBotでの制作に特化した「コツ」に絞って紹介します。

1. 使う板の厚みと、加工に使う刃物をあらかじめ決めておく
ShopBotを用いた組み立て家具でよく用いられるのは、切り出した部材どうしを直行させてはめ込む方法です。上の写真でも、直行する天板と脚、脚と筋交いをはめ込んで組み立てられています。什器に使う板の厚みが決まっていないと、はめ込みに用いる切り欠きの大きさが決まりません。どんな形や大きさの什器を設計するかと同時に、どの厚みの板材で造作するかを決めておくと設計が進めやすくなります。この時は厚さ18mmのシナランバーコア材を用いました。
また、ShopBotでの切り出しに使う刃物もあらかじめ決めておきましょう。ルーター加工では、内角をシャープに加工することができません。詳しくは後述しますが、切り欠きの内角には「ドッグボーン」と呼ばれる形状を加えることで、直角の部材を寸法通りにはめ込むテクニックがあります。このドッグボーンを設計する際に、予め使う刃物の径が決まっていればスムーズに設計できます。今回の什器は直径1/4インチ(=6.35mm)のストレートビットを用いて切り出しました。

2. 切り欠きのオフセット値を決めておく
切り出した部材をはめ込んで組み立てる方法は、適切に設計すれば、ネジや接着剤を使わなくともしっかりした構造になります。ただし、実際に使用する板に対して適切なサイズの切り欠きを設けないと、キツすぎて組み立てられなかったり、逆に緩すぎて期待する強度が得られなかったりします。こうしたはめ込み部の設計では、板の厚みに対して0.1〜0.2mm程度のオフセットを設けるのが一般的と言われています。今回の厚さ18mmの板材では、0.15mmのオフセットを設けました。

区分表示寸法との差
厚さ広葉樹表示厚さ4mm未満±0.2mm
同4mm以上7mm未満±0.3mm
同7mm以上20mm未満±0.4mm
同20mm以上±0.5mm
針葉樹同7.5mm以下+0.5mm、-0.3mm
同7.5mm超+0.8mm、-0.5mm
出典:合板の日本農林規格(発行:農林水産省)

ただし、現実に用いる板にはある程度の誤差があるので注意が必要です。上の表は、JIS規格上で定義されている合板の厚みと許容差を表しています。表にならえば、厚さ18mmのランバーコア合板には、最大で±0.4mmの厚みの誤差があることになります。上記のオフセットの値よりも大きい誤差なので、実際に使う板材の厚みを計測してから切り欠きの幅を決めるのがベストです。

3. 適切なドッグボーンを設計する
前述したドッグボーンは、ルーターでは内角をシャープにカットできないという問題への対処法です。ドッグボーンのパターンはいくつかありますが、刃径と同じサイズ以上の円を角に合わせて合成した形状になります。

左のパターンがいわゆる「犬がくわえた骨」のイメージに近いため、ドッグボーンという名称がついています。どのパターンでも、組み立てた際に円形の隙間ができます。左のパターンは隙間が最も小さく、スツールの座面やテーブルの天板などに用います。中央のパターンは、直交させる板によって隙間が隠れるので、スツールの脚部などに用います。


ShopBotで切り出したパーツを組み立てて、設計通りに家具や什器が形になった時の喜びはひとしおです。弊社が運営するファブラボみなとみらいでは、ShopBotも一般利用可能な機材として公開しています(*1)ので、ぜひチャレンジしてみてください。

(*1) ファブラボみなとみらいでShopBotをご利用いただくには、ShopBot講習会を受講いただく必要があります。