デジファブパーク制作レポート(3)【3Dプリンターの仕組み】

長野県佐久市にある、佐久市子ども未来館で開催された2022年夏の企画展「デジファブパーク」。会場を彩った数々の展示物の中から、その一部の制作レポートをシリーズでお送りします。レポートの第三弾は、展示遊具のひとつ「3Dプリンターの仕組み」を紹介します。

「3Dプリンターの仕組み」は、立体モデルをいくつもスライスしたパズルです。
パズルの表面に数字が刻印されており、1から順に積み上げていくと、3Dプリントした見本と同じ立体の形が出来上がります。
1層ずつ樹脂を積み重ねて作る3Dプリンターの仕組みを、自分の手で実際に積み上げながら追体験することができる遊具となっています。


子どもたちが複数人で同時に楽しく遊べること、小さな子どもたちから保護者の方まで幅広い年齢の方が遊べることなどに気をつけながら制作を行いました。

草案段階のスケッチです。パズルのモチーフや、パズルを置くための什器について検討しています。


パズルの設計には「Fusion Slicer」というソフトを使用しました。
Fusion Slicerは、3Dデータを取り込み、使用したい板材の厚みやサイズ、モデルのサイズなどを記入し、好みの展開方法を選ぶと、レーザー加工可能な展開図を作成してくれる便利な無料のソフトウェアです。
このソフトウェアで書き出した展開図のデータから、小さすぎるパーツを排除したり、ピースの番号をふり直したりと、実際にレーザーカットして状態を確認しながら、最終データの制作を行いました。

横方向のスライスだけではなく、縦横交差するようなさまざまな展開図の書き出しに対応している。

当初はMDFなどの木材を使用して制作する予定でしたが、試作の結果、厚みのある木材をレーザーカットするとどうしても小口が黒くなってしまい、積み重ねた時に形状が分かりにくくなったり、地味な色合いになり楽しい雰囲気を演出できなくなったりといった問題が出てきました。

そこで、厚みのありカラフルな材料を探しました。さまざまな材料で試作を重ね、断面が熱で溶けて縮んだり、パーツが軽くなりすぎて重ねることができなくなったりと色々な問題がありましたが、結果的に小口が美しくカラフルで、怪我の危険性も少ない「evaボード」と呼ばれるスポンジを使用することにしました。

パズルには1つ1つ数字がふってあり、その順に積み上げると立体モデルが出来上がる。


パズルは難易度別に4種類あり、比較的簡単なものから、細かいパーツを慎重に積んでいかないと完成しない難しいものまで準備しています。

モチーフには、デジファブパークのテーマビジュアルにもなっている木「digi-fab Tree」、佐久市子ども未来館のロビーに大きなモニュメントのあった「Space Shuttle」、3Dプリンター愛用者にはお馴染みのテストモデル「Stanford Bunny」と、「3DBenchy」を選びました。

小さなパーツも多いため、パズルが無くなってしまわないよう、特製のケースも設計、制作しました。
ケース上部のタイトルや注意書きは、UVプリンターで加工しています。
円形の板にパズルの1層目が貼り付けてあり、そこをステージにしてパズルを作っていく仕様になっています。

展示中には、狙い通り複数の難易度のパズルを用意したことにより、子どもたちの他にも熱中してパズルに取り組む保護者の皆さまの姿も印象的でした。
1層ずつの積み重ねが立体になっていくという3Dプリンターの仕組みについて、パズルを用いた体験を通じて興味を持っていただくきっかけとなっていれば幸いです。