【Studies】スクリプト、使ってますか?

こんにちは、ファブラボ神田錦町の井上です。

今回はデジタルファブリケーションで重要な「データ作成」に関するStudiesです。デジタルファブリケーションを使うにあたって、2Dあるいは3Dデータ作成ソフトをお使いだと思います。2DではAdobe IllustratorやInkscape、3DならFusion360やTinkerCADあたりが、個人でもよく使われているソフトだと思います。今回は、データ作成を少し(あるいはものすごく)楽にしてくれるAdobe Illustratorの”スクリプト”について紹介します。

スクリプトとは、それぞれのソフトの標準機能では行えない処理を行ったり、手間のかかる作業を自動化してくれるプログラムです。開発者さんが無償公開しているものから、より高機能な有償のスクリプトまで、いろいろなスクリプトをネット上で見つけることができます。プログラムというと難しそうに聞こえますが、どのスクリプトも通常のソフトと同じようにダウンロード/インストールするだけで使えるので、プログラミングが出来なくてもその恩恵に預かることができます。今回はAdobe Illustratorに絞りますが、Fusion360やInkscapeにもスクリプトはあります。


Adobe Illustratorのスクリプトをインストールする

Adobe Illustratorのスクリプトは、「.jsx」というファイルでダウンロードされます。ダウンロードした.jsxファイルを以下のディレクトリに入れましょう。

Windowsの場合
C:> Program Files> Adobe> Adobe Illustrator 20xx>プリセット> ja_JP> スクリプト

Macの場合
アプリケーション> Adobe Illustrator 20xx> Presets> スクリプト 

もしIllustratorを開いている場合は、再起動しましょう。


インストールしたスクリプトを呼び出す

ファイルメニューのスクリプトにカーソルを合わせると、インストールしたスクリプトが表示されます。


筆者がよく使う便利なスクリプト

急にスクリプトの話をしても、実際にどんなことができるのかイメージしにくいと思います。ここからは筆者もよく使うスクリプトを中心に、いくつかのスクリプトを紹介します。スクリプトを活用するイメージにつながると思います。

「テキストばらし」 by 倉本タカシ、タクトシステム

このスクリプトは、ひとつのテキストオブジェクトを改行の位置で個別のテキストオブジェクトに変換してくれるスクリプトです。例えば名入れ作業などで、複数のテキストを個別に充てたいといった時に重宝します。名入れするテキストのリストは、元が表計算ソフトやエディターソフトでもらう場合がほとんどです。名前をひとつずつコピペするのは非常に手間で、数が増えるほど時間がかかります。このスクリプトを使えばリストに何百人いようが、全体をコピペしてワンクリックで個別に分解してくれます。

「MonolineText」 by Jongware

このスクリプトは、入力した英数字からシングルラインテキストを生成するスクリプトです。英数字のみ、フォントも規定の形のみという制約はありますが、レーザーカッターやCNCルーターでテキストを線の形で加工したい場合に重宝します。

「レイヤーごとにPDF書き出しをする」 by karappo web design room

このスクリプトは、タイトルの通りです。アートボード毎に書き出すことは標準でできますが、レイヤー毎にとなると手間がかかりました。このスクリプトを使えば、ほぼワンクリックで各レイヤーを個別のpdfに書き出してくれます。レイヤー名がそのまま各pdfのファイル名に適応されるので、実行前に各レイヤーに名称を入れておくと良いでしょう。

「重複したアンカーポイントを削除する」by ONTHEHEAD

こちらのスクリプトもタイトル通りです。オブジェクトが多い複雑なデータになってくると、知らず知らずのうちにオブジェクトが重なっていたり、パスがややこしくなったりします。ぱっと見では気づきにくい上に、そのまま加工しようとすると同じところを2回カットしてしまうなど、厄介なデータをきれいにしてくれます。


かゆいところに手が届くような機能から、こんなことができるのかといった機能まで、スクリプトひとつで作業効率や可能性が大きく変わります。他にも色々なスクリプトが出回っているので、ぜひ探してみてください。

これまではスクリプトをゼロから構築するのは難易度の高い作業でしたが、ChatGPTをはじめとした対話型AIの普及が進むなかで、”AIにスクリプトを書いてもらう”といった動きも出てきています。「やりたいこと」を「指定の文法(プログラミング言語)」で書いてもらうだけなので、確かに人間よりもAIの方が得意な分野に違いありません。もしかしたら今後はAIの補助を受けながら、現在のスマホのように、既成のソフトウェアツールをどんどんカスタマイズしていくのが当たり前になってくるのかもしれませんね。