イベントレポート | レーザーカッターでレザークラフト

2023年3月、デジタル工作機器を備える企業内工房にて、レーザーカッターをはじめて使う方向けの「レザークラフトワークショップ」を開催しました。社員なら誰でも自由に使用できる工房のため、より多くの社員に活用して欲しいとの想いから、このイベントが計画されました。

今回実施したのは、牛の本革をレーザー加工し、革小物を作るワークショップです。レーザーカッターを使うと、複雑な彫刻や、難しい革のカットを機器に任せることができるため、はじめての方でも気軽にオリジナルの革小物を作ることができるのが特徴です。
この記事では、当日の流れを順に紹介していきます。

材料
今回は「ヌメ革」というレザークラフトでよく使用される植物性のなめし剤(タンニンなめし)で加工された革を使用しました。
※同じ本革でも、レーザー加工に適している革と、適さない革があります。特に、よく手芸店などでも販売されている「クロムなめし」と呼ばれる方法で加工された革は、強い熱を加えた時に有毒なガスが発生する場合があるためレーザー加工に適していません。

デザインを考える
このワークショップでは、キーホルダー・コードホルダー・コインケースの何れかを選ぶことができます。
さらに皆さんには、アイデアシートを使って小物に彫刻するイニシャルや文字のデザインを考えていただきました。
レーザーカッター用の加工データは、Adobe Illustratorなどのデザイン専用ソフトで作られることが多いのですが、簡単なデータなら社会人が慣れ親しんだOfficeのソフトでも作ることができます。今回ワークショップに参加された皆さまは、普段あまりデザイン専用ソフトを使用することが無いとのことでしたので、Powerpointを使ったデータ作成の方法もご紹介しました。


レーザーカッターで革を切る
革をレーザーカッターの作業台にセットします。
革は自然のものなので表面が凸凹していることがあり、そのことによって彫刻やカットにムラが出ることがあります。なるべく平らな革を選び、作業台にセットする時に浮きが出ないよう、マスキングテープで作業台にしっかり固定します。
アイデアシートを基に作成したデザインデータを、使用する革に合わせたレーザーの強さや速度で加工します。
レーザーカッターでカットした革の端面は、熱で焼き切る時に焼き固められるため、ほつれ処理の必要が無い事が特徴のひとつです。しかし同時に焦げが発生するため、カット面が黒くなります。次の作業にうつる前に端面を綺麗に拭き取り、革の表面(銀面と言います)が汚れないようにします。


手縫いのための縫い穴もレーザーカッターでカットしました。
本来は「ひし目打ち」と呼ばれるフォークのような道具を使って穴を開けるのですが、木槌でたたきながら少しずつ穴を開けていく工程には時間と技術が必要です。縫いたいラインに沿って、がたつきのないように穴を開けないと、糸を通した時に縫い目が綺麗になりません。
レーザーカッターはデータ通りの加工ができるので、経験や技術にかかわらず、思った通りの穴を開けることができます。
※ただし、カット面は黒く煤けているため、縫い糸が黒く汚れやすいというデメリットがあります。


金具をつける
キーホルダーには、リングを固定するための「カシメ」を、コードホルダー・コインケースには、開け閉めする「バネホック」を打ちました。通常はポンチと呼ばれる道具で穴あけを行ってから金具を打つのですが、レーザーカット時に穴を開けているので、取り付けが簡単です。

縫い合わせる
革用の針と、ロウビキ糸と呼ばれる蜜蝋が塗られた糸を使って縫い合わせます。

完成
オリジナルデザインの革小物が完成しました。
初めての作業で苦労される場面もありましたが、参加者の皆さんからは「彫刻がすごく細かくて綺麗!」「意外と簡単にできた!」などの声も上がりました。

レーザーカッターは精密なカットが可能で、複雑なデザインもデータ通りに容易に加工できます。手間や技術が必要な縫い穴開けやカット作業、カット断面の後処理を省くことができるため、初めての人でも美しい仕上がりを得られます。
同じデザインを繰り返し作ることも簡単なので、いくつかのポイントさえ掴めば、クオリティの高い手作りプレゼントや記念品にも活用できるのが魅力の一つです。

今回のワークショップを通じて、参加者の皆さんにレーザーカッターの具体的な活用方法の一例をご紹介しました。
この体験から、企業内工房がより活性化し、社員の皆さんにレーザーカッターをひろく活用していただければ嬉しいです。