イベントレポート | Bali Fab Fest 後編

こんにちは。10月にインドネシア バリ島で11日間開催された、「Bali Fab Fest」(以下ファブフェス)に特派員として参加した糸見啓介です。
今回の記事はファブフェスレポートの後編です。このレポートではファブフェス期間中に開催されたワークショップの様子を紹介します。前編は次のリンクからご覧ください。

参考リンク↓
イベントレポート | Bali Fab Fest 前編
Bali Fab Festオフィシャルサイト

「PROJECTION MAPPING FOR BEGINNERS」

プロジェクションマッピングを実際に体験するワークショップです。
最初にプロジェクションマッピング用のソフトの使い方を一通り説明してもらった後、参加者それぞれがデザインデータをつくり、思い思いの場所に自分のデザインを投影していきます。
プロジェクションマッピングには専用の機器等が必要だと思っていたのですが、今回使用したのは無料ソフトと一般的なプロジェクターでした。プロジェクターは日本円で6,000円程度のもので、意外と手軽に始めることができるという事実に驚きました。

壁に投影の目印(写真右側の▽)がありましたが、私たちのグループは部屋のエアコンに投影しました。
暗くなった部屋でギラギラしたデザインがエアコンに投影され、チームメイトが「ここはパーティー会場だ」なんて冗談を言っていたりしました。

夜には会場の大きな石像にプロジェクションマッピングを投影しました。
正確には分かりませんが、こちらの石像は「シンガ」という厄除けのために飾られているものです。日本でいう、沖縄のシーサーのような役割を果たしています。
文化的な石像に投影する行為に対して「現地の人が怒るんじゃないか…。」と勝手に心配になっていましたが、現地のイベント主催者やスタッフの方が快く了承してくれました。それどころか、より綺麗に見えるようにと周辺のライトを落としてくれたりと、暖かく協力してくださいました。
デジタルファブリケーションを通じて、文化や技術の交流を自然と行う瞬間を間近で見ることができた、貴重な経験となりました。


「GENERATIVE ART WITH P5JS」

ワークショップタイトルの「P5JS」とは、電子アートとビジュアルデザインのためのプログラミング言語「Processing」のJava版をさします。このP5JSを用いてプログラミングを学び、お題のアートを作り上げるワークショップでした。

私自身、プログラミングは少ししか触れたことがなく、ProcessingのJava版と言われてもよく分からない程度です。しかしP5JSは書いたコードを即座に画面に反映してくれるツールなので、正しく作動した時の達成感を何度も感じることができますし、何度でもやり直すこともできるので挫折せず楽しく学ぶことができました。

私が実際にワークショップで制作したのは、イベント開催地であるバリにちなんだアートプログラムです。
ぜひ以下のリンクからご覧ください。
p5.js Web Editor | first p5 program (p5js.org) ※左上の再生ボタンを押すとアートが流れます

P5JSは以下のリンクから体験できます。
home | p5.js (p5js.org)

ここまで、プロジェクションマッピングやプログラミングのワークショップについて紹介しました。
“デジタルファブリケーション”というと、3Dプリンターやレーザーカッター、CNC等の機械を使ったものづくりが真っ先に思い浮かびます。
改めて、「デジタルファブリケーション」とGoogleで検索すると、
「デジタルデータをもとにして、ものづくりをする技術」
と出てきました。この定義から考えると、プロジェクションマッピングもプログラミングも、デジタルデータを利用して”ものづくり・コトづくり”をしています。もしかしたらこの記事をご覧になっている皆さんも、ファブラボにあるような機器以外でも、いつの間にかデジファブに関わっているかもしれません。「デジタルファブリケーションとは何か」を考え始めるきっかけとなったワークショップでした。


「MAKER VERSE

最後に紹介するのが、「MAKER VERSE」というイベントです。
こちらはファブフェス期間の1~2日間を使い、MAKER FAIRのように地元企業やファブフェス参加者が制作物の展示を行うイベントです。会場全体にたくさんの展示スペースがありましたがその中で印象的だった展示をいくつか紹介します。

こちらは竹と竹を接続する治具です。
インドネシアは竹で作られた建築物がたくさんあったりと、竹産業が非常に盛んな国です。竹は「早く伸びる・安い・強い」という特徴があり、環境問題の側面から注目されています。しかし形が不揃いなため活用することが難しいという難点がありました。それを解決するために、どのような竹の形でも接合できる治具を制作されました。
実は、この治具を制作されたのは日本人で、普段から社会問題に関心を持ってこのような取り組みをされているそうです。

こちらはプラスチックごみから作られた日用品です。
プラスチックには加熱によって溶融するものがあります(熱可塑性プラスチック)。 これは集めたプラスチックごみを溶かして板状にしたものを、CNCで加工して制作したそうです。
プラスチックごみを活用したこのような製品は以前にも見たことがあったのですが、特にこのグッズたちはすごく綺麗なデザインで思わず「購入できないか?」と声をかけてしまいました。

こちらはバイオマテリアルの防草シート。
インドネシアではたくさん雑草が生えるため、住民は草刈りに追われることが多いそうです。このバイオマテリアルシートはココナッツファイバーが原材料となっています。従来使用されているプラスチック製の防草シートは熱を逃がしにくい特性がある一方で、バイオマテリアルシートは熱を調整しやすいことが特徴なので、季節を問わず安定して植物や果物を育てるのにも適しています。
インドネシアの地域特有の問題やアイデアを知ることができ、良い機会となりました。


ワークショップの紹介は以上です。
私がバリに滞在した約2週間、至るところでワークショップ・講義が開催されていました。参加したワークショップを2本の記事に渡っていくつか紹介しましたが、どのワークショップも分野が多種多様で、共通点が見当たらないような、そんな印象を受けました。強いて言うならば、「デジタルファブリケーション」という共通点でしょうか。デジタルファブリケーションは分野を問わず、それと同時に分野の架け橋のような存在だと感じました。

第1弾の記事の最初でも触れましたが、マサチューセッツ工科大学のニール・ガーシェンフェルド氏が
“How can almost anybody can make almost anything”
“どのようにしてほぼすべての人がほぼ何でも作るか”
というテーマについて言及していました。

興味はあるが未経験で知識がない分野のワークショップにたくさん参加しました。僕の英語能力では話についていけない時が何度もありましたが、それでもワークショップ内でたくさんのものづくりに参加することができました。
それは今日のデジファブ機器の恩恵を受けた結果です。
機会・機器があれば自分が作ってみたいと思ったもの・コトに挑戦できる時代だと感じました。これからもFabLabに通って自分の作りたいものを作り続けたいと思えた、2週間となりました。

最後までご覧いただきありがとうございました。