【Studies】食品用3Dプリンター「Procusini」レビュー

こんにちは、デジタルファブリケーション協会の井上です。

3Dプリンターのレビューが続きますが、今回は趣向を変えて「食品用3Dプリンター」のレビューになります。3Dプリンターに注目が集まり始めた2010年代前半から食品用3Dプリンターは度々話題に上がりましたが、これまで実際に触ったことはなく、国内での活用事例もあまり聞いたことがありませんでした。産業用から家庭用まで様々な3Dプリンターの活用が進むなか、今回は食品用3Dプリンターを扱う機会が得られたのでレビューしたいと思います。

今回レビューするのはドイツのスタートアップ企業Print2Taste社のプロシューマー向け3Dプリンター「Procusini 5.0」です。同社からはコンシューマー向けの「Mycusini」という機種もリリースされています。チョコレートのほか、マジパンやパスタなど、様々なペースト状の食材を造形できます。ユーザー自身でパラメーターを検証する必要はありますが、オリジナルの食材を出力することもできます。食材によっては出力中にノズルが熱くなりますが、一般的な3Dプリンターに比べれば遥かに低温です。

カフェやケータリングを伴うイベントなどを想定しているのでしょう。シャープでミニマルな外観が印象的です。ステンレス製のシリンダーに食材を詰め、ピストンで上から押し込みながら造形していく方法です。上の写真の手前に写っているのが専用の食材で、ソーセージのように食材がビニールフィルムに包まれています。

機材の方はいたってシンプルな構成で、普段から3Dプリンターを使っている筆者からすれば難なく扱うことができ、むしろ普段使用している機材より簡単と言っていいレベルでした。付属のシリコンマットを敷いた造形テーブルへの定着もよく、正しくメンテナンスすれば安心して造形し続けられる印象です。とはいえ、こうした食品用3Dプリンターがターゲットにしているのは飲食店のシェフやパティシエです。こうした機材の扱いに不慣れであろうユーザーにとっては、機材本体の扱いやすさに加え、ソフトウェア面の扱いやすさも重要になってきます。

Procusiniを購入すると、ユーザーは「Procusini Club」というブラウザーアプリケーションへのアクセスアカウントが与えられます。ブラウザからログインすると上のような画面になります。このProcusini Clubが専用スライサーソフトになっており、ユーザーはこのアプリケーションから書き出したデータをプリンターに移して出力するという流れになります。

Applicationsと書かれた画像をクリックすると、様々な造形モードを表すメニューが出てきます(画像上)。手持ちの3Dデータをアップロードして使うモード(3D Objects)や、テキストを打ち込んで3Dデータ化するモードなど(Text messages, Lettering)があります。どのモードもステップバイステップで作業を進められるので、英語表記であることを除けば難しいポイントはありません。

上の画像は、手持ちの3Dデータを出力する「3D Object」モードの編集画面です。モデルの大きさを編集する以外の編集項目は無く、一般的なスライサーに見られるような積層ピッチや造形スピードといったパラメーター調整はありません。どの食材で出力するかを予め決めるので、選択した食材に適したパラメーターが自動的に割り当てられる形になっています。コアな3Dプリンターユーザーからすれば、調整項目の少なさは面白みに欠ける部分もありますが、そもそもこうした機材に慣れていないユーザーにとってはむしろ安心して扱えるポイントでしょう。

シェフやパティシエにとっては、そもそも3Dデータを用意するのが大変だという場合もあると思います。Procusini Clubには1,000点を超えるテンプレートモデルが上がっており、ユーザーはこの中から好きなモデルを選んで造形することができます(画像上)。色々なテキストデータや季節感のあるモチーフ、幾何学的な立体データなど、たくさんの選択肢が並びます。もちろん、Thingiverseなどの3Dデータ共有サイトからダウンロードしたモデルを使うこともできるでしょう(※ライセンスにはご注意ください)。


Procusiniを実際に使ってみて、自由度を犠牲にする代わりにとてもユーザーフレンドリーなサービスに仕上がっていると感じました。ターゲットが3Dデータの扱いに長けたエンジニアやデザイナーでは無く、シェフやパティシエであることをよく意識していると感じます。鍋や包丁の代わりに、コンピューターを触っているうちに隣で食品が出来てくるのは、なんともいえず新鮮な感覚でした。他の3Dプリンターと同様に、こうした食品用3Dプリンターが今よりもう少し普及して、食に付加価値をつけるサービスが増えれば、もう一段彩り豊かな生活になりそうな未来を感じました。

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