イベントレポート | NSK夏のリコチャレ2023 マーブルマシン作りで設計体験

2023年8月末に、日本精工株式会社(以下NSK)主催「夏のリコチャレ2023 集まれ、ものづくりファン!デジタルファブリケーションdeプロダクトエンジニアのプチ体験をしよう」が開催されました。

乗り物や家電など、機械の動作にかかせない回転を、よりスムーズにさせる部品、「ベアリング」。NSKは、ベアリングの世界トップ企業です。
なめらかにベアリングのボール(鋼球)がレールを走り続ける、このCMを見たことがある方も多いのではないでしょうか。魔法のように滑らかに動くレールやボールの映像は、なんとCGではありません。NSKの技術力により、この動きが実現されています。



「リコチャレ」とは、理工系分野に興味・関心のある女子学生の進路選択を支援するために、内閣府男女共同参画局や文部科学省、日本経済団体連合会などが中心となって行っている取り組みです。NSKは、この「リコチャレ」に応援団体として参加されています。
当社は、今年のイベントの企画開発、実施のサポートを行いました。


今年のテーマは「デジタルファブリケーション」と「設計体験」。学生の皆さんに「設計」の追体験をしていただきながら、ものづくりの楽しさや達成感を実感してほしい。そんなNSKの皆さんの想いが、このテーマにこもっています。
1日という限られた時間の中で、いかにわかりやすく、楽しみながら設計を実践していただくか、体験内容を検討しました。そこで、先ほどのCMより着想を得て、「マーブルマシン」の設計、組み立てを体験していただく内容を企画しました。

マーブルマシンとは、ボールがぐるぐるとレールを回り続ける装置のことです。組み立てキットになって販売されているものをお店でよく見かけますが、用意されたパーツを用いて、決まったコースを設計図通りに組み立てる仕様になっているものがほとんどです。今回はこのイベントのために、自身でオリジナルのコースを設計でき、なおかつ容易な方法で組み立てができるマーブルマシンキットを開発しました。

参加者の皆さんが制作したマーブルマシンの様子

このキットは、MDF板をレーザーカッターでカットして制作しています。
土台には、無数の穴が開いており、任意の場所にパーツを刺して、コース設計をすることができます。
ボールを持ち上げる仕組み「リフト」にはモーターが組み込まれていて、スイッチを入れると電動で動き続けます。
ボールが走るレールを支えるための支柱を土台に刺し、支柱の先端の溝にレールをパチッと挟んで固定します。

レールにはプラスチック製の棒を使用しました。手で曲げられるので、思い通りのコースを作ることができます。ただし、あまり長いコースや、急カーブを作るにはやや不向きなので、カーブ用のパーツを別途準備しました。3種類のカーブ角度があり、レールと繋ぐことで、ボールがスムーズに角を曲がります。

このキットを用いた当日のイベントの様子を、順を追ってご紹介します。

1.設計について学ぶ

まず初めに、今回のテーマである「設計」とは何かを学びます。設計には、どんなものを作って欲しいかという「オーダー」と、それをどのように実現するかという「仕様検討」が必要です。設計とは何か、どのような点に気をつけて設計を進めていくか。NSKの皆さんに、日頃のお仕事でのお話を交えた、楽しくわかりやすい解説を伺いました。

2.マーブルマシンの設計(仕様検討)

設計についてのポイントを確認したところで、早速マーブルマシンの設計を始めます。
コースを考える前に、「のぼるコース」「落ちるコース」「まわるコース」「くぐるコース」など、今から作るコースのテーマを決めます。このテーマが、今回の設計体験で言うところの「オーダー」になります。オーダーを叶えられる仕様にするには、どのような設計が必要か?それを考えながら、図面を書き起こす必要があります。

テーマが決まったら、マーブルマシンを上から見た図(上面図)と、横から見た図(正面図)を書いて、設計をしていきます。
上面図では、ボールがどんなコースで走っていくか、そのレールの形をイメージします。正面図では、ボールが止まることなく転がり続けられるか、レールの高さを考えます。カーブパーツの作図には、専用の定規を準備しました。

3.設計図の3D化

参加者の皆さんが書いた設計図を元にして、NSKの技術者の方々が3DCADを用いてコースを書き起こします。
頭の中でイメージしていたコースが3次元的に視認できることによって、ボールが狙い通りに転がりそうか、実現可能な設計となっているかなどの確認がしやすくなりました。

4.レーザーカッターでパーツの切り出し

必要な支柱パーツをレーザーカッターで切り出します。レーザー加工は、今回のイベント会場の程近く、ファブラボ神田錦町にて行いました。
初めてレーザーカッターを見る方も多く、欲しいものが、すぐに必要な分だけ加工できる様子に、驚きの声が上がっていました。

5.組み立て作業

パーツが揃ったら、先ほど書いた設計図通りに組み立てます。土台に支柱やリフトを刺したら、プラスチック棒を繋いでレールを作っていきます。3種類の角度のカーブパーツや、プラスチックのレールの間隔を保持する小さな支持具などを活用しながら、組み立てていきます。

6.動作テスト

コースが組み上がったら、モーターを動かして動作テストをしてみます。
ボールがコースから飛び出してしまったり、途中で止まってしまったり。ゴールにスムーズに辿りつかない部分を最終調整します。

7.完成!

ついにマーブルマシンが完成しました!
最後は、製作したマーブルマシンを動かしながら発表会を行います。最初に設定したマーブルマシンのテーマや、コース設計にあたり気をつけた点、アピールポイントをひとりずつ紹介していただきました。ボールが予想外にアクロバティックな動きをしたりと、完成作品を眺める皆さんも、とても盛り上がっている様子でした。

参加者の皆さんほぼ全員が、時間内にマーブルマシンを形にすることができました。
接着剤を使用しない組み立て式なので、自宅でもし支柱やコースが外れてしまっている部分があっても、すぐに直すことができます。ルートの変更も可能なので、持ち帰っても、ぜひまだまだ改良を続けてみて欲しいです。

今回のイベントには、高校生・大学生の方々に参加していただきました。自身で設計したものがきちんと動く様子に、達成感や充実感を持って、楽しんでいただけた様子でした。草案時点では、紙に鉛筆で書くというアナログ作業でイメージを固めつつ、そこから3DCADで立体的なコースモデルを起こしたり、レーザーカッターで必要なパーツをカットしたりと、アナログとデジタルを横断したものづくりの方法をご体感いただけたのではないでしょうか。
ものづくり、理工系に興味のある学生さん方に、このような体験を通じて、設計やデジタルファブリケーションに興味を持っていただければ嬉しいです。

当社では、デジタルファブリケーションにまつわる体験イベントの企画・実施を承っています。
対象とする年齢やニーズに合わせて、イベントの内容や難易度、使用する機器などのカスタマイズが可能です。
お気軽にご相談ください。