3Dプリンターでグリッド式引き出し収納をつくってみた
こんにちは。「整理整頓のことを考えるとき想像は楽しいけど実行までに時間がかかる人」です。
今回はGridfinityという3Dプリンターを使用して作れる収納システムをインターネットで見かけたので実際にやってみようという内容です。
Gridfinityとは
Gridfinityは、Zack Freedmanさんが提唱する生産性、整理、安全性を維持するための究極のモジュール式ストレージシステムです。
オープンソースプロジェクトとなっており、ほぼ 3Dプリントだけで作ることができるのも特徴としています。
1.使用する場所から手の届く範囲にある
2.露出していて掴みやすい
3.こぼれや怪我などの事故から身を守る(二次災害の防止)
4.セットアップは簡単で、元に戻したり再配置したりするのも非常に簡単
細分化しつつも広く展開し、一覧性をもたせつつも取り出しや片付けもしやすい。また配置の変更やスタックなどもできるという、おもしろ収納プロジェクト。
この収納システムはBaseとBinで構成されます。
Baseは42mm x 42mmの正方形が並ぶ格子プレートです。
Binは42mm x 42mmを最小単位として構成される容器。
どちらも四角の規格が適合するため、下に敷いたBaseにBinをはめながら配置をしていくことができます。
ここで重要な数字。42と7。
42は1グリッドの大きさです。BaseとBinの縦横は42mm刻み。
なぜ42mmなのかについては一応言及があり、「42は他の多くの数字と均等に割り切れるので、ツールが印刷物に収まる可能性が高くなる」からとのこと。
また「文学的な参照」もあるらしい。(Google検索で「人生、宇宙、すべての答え」と検索してみよう…)
7は1ユニットの大きさ。 Uという単位で1u=7mm、高さは7の倍数って覚えればOK。どちらも整数倍であるため全体的な統一感が生みやすいのも狙っているのかな…。
https://gridfinity.xyz/specification/ Credit: willtree8
今回はこの規格を使用して、収納を作ってみたいと思います。
今回の主戦場
職場の引き出し、です。
IKEAやダイソーなどのプラケースを使用し、中の仕切りを構成しています。これはこれで味があって可愛いですね。
もうこの配置に慣れているというのもあり不便はしていないのですが、スキマがあり有効に活用できていない所も。
一貫性が出てきれいになるなら!と思い、実験台(環境改善業務)としました。
グリッド割り当て
まず引き出しの寸法を測り、グリッドを割り当てていきます。
今回計測した感じだと縦8横8で64グリッド分のベースが入れられそうです。
3Dプリンターで作る(グリッド)>3Dデータ引用
https://makerworld.com/en/models/26565?from=search#profileId-23213
Baseを印刷します。8×8のBaseが一度に出せればいいですが、360mm四方が一度に出せる3Dプリンターはなかなかに存在しないので、分割して出していきます。
さっと身近にある 3Dプリンターが180mm四方が出せたので 4×4、4×3とか4×2とかを出しました。
配置、調整
ベースプレートを配置していきます。
引き出しの内寸は[縦横それぞれ360mmくらい]となっており、42できれいに割り切れるわけではなかったので多少はみ出す部分もありますが敷き詰めていきます。
再出力もできただろうけど面倒だったのと微調整が効くと言う理由で超音波カッターでカット(ものは言いよう)
区画割り当て
大まかに机の中身を出して割り当てていく。
ここはこんな感じかな.と妄想をしまくり、必要なBinの構成をイメージ。
データ作成
このGridfinityはそれなりにでかい規模のコミュニティが存在している様子で、3Dデータ掲載サイトで検索をかけるとすごい数のBinがヒットします。なのでなんならデータを作る必要すらなく完結できると思います。
https://makerworld.com/en/search/models?keyword=gridfinity
ただ今回はちょっと自分でも作ってみようよ〜というスタンスで以下のツールを使用しました。(といっても、ジェネレーター頼りです ^^)
Makerworld API
今回引き出しの都合でハーフサイズのBinを作る必要がありました。
Redditで情報があり、そこをたどるとMakerworldのWebジェネレーターが。
色々調べた結果、MakerWorldでは「OpenSCAD」(ソースコードで3Dモデリングできるソフト)を走らせることができるようです!
※ジェネレーターを使用する際にはアカウント作成が必要です。
https://makerworld.com/en/models/481168#profileId-495677
ベースとなるデータgridfinity_basic_cup.scadをもとに、OpenSCAD内でパラメーターを変えていく。自分のノートパソコンは非力でファンが唸ってはいたものの、特別なソフトなし・ブラウザのみで動作してくれたのは結構好印象。
操作説明:https://docs.ostat.com/docs/openscad/gridfinity-extended/basic-cup/
出力
PLAで出力したがサポートなどつけなくてもほぼ失敗しない。
大きく出すものだと多少カドの浮きなど起きましたが、使用上は全く問題ありません。
簡単に数点出力し配置。
うーん、実際においてみるとああでもないこうでもないというのが出てくる。あんなBinがあったらな、こんなBinを置きたいなと。
しかし2つやりたいことがこちらのジェネレーターではできませんでした。
1.仕切りを変則的に入れたい
→規則的なグリッドのみ作成ができてここは大きい部屋にするけどここは区切りたい、みたいなことができなかった
2.Binの高さはそのままに深さだけ変えたい
→基本は Binの深さ=Binの高さ-底の厚さなので背の高さを揃えながらも深さを変えるのが難しそうだった。
どうしようかと別の方法を探していたら次のものを見つけました。
Fusion360アドイン「GridfinityGenerator」
https://apps.autodesk.com/FUSION/ja/Detail/Index?id=7197558650811789&os=Win
64&appLang=en
これだ!仕切りを変則的に入れたり、深さを変えたりできる!しかもそれなりに動く!
やりたいことはかなった。
ちょっと仕切りの組み方の指定がクセありだが、イジイジしてればなんとかなるでしょう。
https://github.com/Le0Michine/FusionGridfinityGenerator/wiki/Baseplate-generator-o
ptions
グリッドの座標で指定する、この感覚が難しかったですが、都度プレビューをONにしているとモデルにすぐ反映されるので見ながら調整しました。
ある程度の形ができたら、その後はいつもFusion360で操作するように、押し出し・切り抜きができるのも良いポイント。
ちなみに自分の古いノートMac環境では正常に動作しなかったため、自宅のデスクトップ Windowsで作業しています。
適宜修正したり再出力したりして、一旦完成形に。
じゃーん!
なんとか仕切りが完成しました。最初に比べるとだいぶ統一感が出たのではないでしょうか。
作ってわかった良いところ・悪いところを書き出してみます。
【良いところ】
・収納づくりのハードルが低い。
→最初の環境構成(ベース作ったりするところ)が大変ですが、 一回組み上がってしまえば自由に組み換えが効く。
・自由度が高い。
→インとアウトが手軽に。 その引き出しで最悪使わなくなったとしても、単純な形状なので別の場所で使える流用性の高さもある。
・データが多い。
→世界中にGridfinityユーザーがおり可能性がほぼ無限大。自分で3Dデータを作らなくてもネット上に欲しい収納Binがあるかも。
【悪いところ】
・コストが高い、かも。Binの土台が「しっかり」しているので 普通に箱形状を作るよりも時間と材料がかかる。
→だけどほぼ自由に構成できる(実質オーダーメイド)と考えたら全然安いね
・色数が欲しくなっちゃう。
→◯色のハコにあれが〜、みたいにしたい。色で分けるならその分色付きフィラメントを用意しなくてはいけない。
今回は事務机の整理ということで文具系が多かったですが、工具棚とか部品棚のような、細分化・アクセスのしやすさが求められる場面ではもっとメリットが目立つのではと思います。
下準備は大変ですが、規格が決まっていることによってグリッドで整理する感覚が染み付いたら楽しいです。
今回はゆるく整理することが目標でしたので箱形状ばっかりで構成しましたが、工具まわりとか整理するならぴったりサイズで作ってみたいな〜。
3Dプリント初心者さんからモデリング上級者まで楽しめるいいプロジェクトだと思いました!
このブログを書くきっかけになった Gridfinityシステムを提唱したZack Freedmanさん、そして現在もコミュニティを盛り上げている皆さんに感謝いたします。
written by ささたか
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Copyright 2022 Zack Freedman
Gridfinity is an invention of Zack Freedman, which he introduced in a YouTube video Apr 12, 2022.
The Gridfinity is licensed under MIT. Permission is hereby granted, free of charge, to any person obtaining a copy of this software and associated documentation files (the “Software”), to deal in the Software without restriction, including without limitation the rights to use, copy, modify, merge, publish, distribute, sublicense, and/or sell copies of the Software, and to permit persons to whom the Software is furnished to do so, subject to the following conditions: The above copyright notice and this permission notice shall be included in all copies or substantial portions of the Software.
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