3Dプリントで理想の講習資料ファイリングシステムを作る

3Dプリントで理想の講習資料ファイリングシステムを作る

工房では、少しでも利用者・スタッフが使いやすくなるよう、日々「工房の環境整備のものづくり」が行われています。この記事では、工房スタッフが行った環境整備のものづくりを紹介します。

今回の題材は機材講習で使用する紙の資料。そのファイルのちょっとした不満を解消し、理想のファイリングをすべく、スタッフが試行錯誤しました。3Dプリンターを利用し、2つの既存のファイルシステムのいいとこどりをした収納が完成するまでの記録です。

講習資料、今でも紙に印刷してます

機材講習では紙に印刷したものを渡します。
アナログじゃん!そんな意見は受けつけません!
ページをめくっていくことで「どれくらい進行してるかがわかる」。
あの情報どこだっけ、ってときにバラ〜っと「おおざっぱに探せる」。
ふとした情報、気になったことをそこに「自由に書き込める」。
中身を検索したい、とか扱いに困る、とか現代において課題も色々ありますが、習熟のことを考えると冊子がいいかなと今でも思うのです。

講習資料のファイリングのちょっとした不満

この資料、今は「レールファイル」というものを使用してファイリングしています。
ちょっとした製本グッズですね。

アーテック レール式クリアファイル 93169 画像はメーカーサイトより

保管・持ち運びに使用し、簡易的な保護もできて書類をきれいに見せることができます。
使うだけで見栄えが良くなるので大好きなのですがこの手の製品には課題があります。
それは「芯が弱いこと」。

レール部分は固いのですが、表紙の材質が弱い。
表紙は薄くて透明感としなやかさを持つPP(ポリプロピレン)であることが多く、
ファイルとしては扱いやすいものの、自立させるのが難しいのです。
例えばファイルをそのまま棚に入れるとふにゃん。
ファイルケースなんかに縦にいれるとぐにゃん。
「なんて扱いが難しいのォ…涙」。

表紙が硬い材質のファイルもこの世に存在はします。
が、今回は保管目的ではなく、さっと開いて見る用途。
硬いのはちょっとな…あのしなやかさがいいの…。
ファイルにはその他にも色々あって、クリアポケットファイルだとかリングバインダーだとか。
ただ、印刷を差し替えることも多いので、なるべく部分的に変えられるのがいいと思うと、ちょっと違うんですよね。

「何かいいの無いかなぁ」からの「ないなら作ろうかなぁ」

色々調べたところいいなと思ったのはこれ。「ハンギングフォルダー」。

TANOSEE ハンギングフォルダー A4 画像はメーカーサイトより

棚に収納というよりはボックスなどを用意し、そこに引っ掛けてしまうもの。
フォルダーと名前にある通り、製本をするわけではなく資料類を挟んでまとめるためのものです。
例えば、家電についてくる説明書なんかをまとめたり、書類を一旦仕分けるような用途だったり。
それぞれの特徴は↓のような感じ。

レールファイル
・冊子状に製本できる
・中身の入れ替えが容易

ハンギングフォルダー
・スッキリまとまる
・用途は「仕切り」に近い

色々考える中で、大事にしたいこと(これだけは外せない!みたいなところ)も出てきました。

大事にしたいこと
・印刷物の表紙はしっかりと見せたいので、表紙カバーは透明で
・中の資料がそこまで分厚くないので、表紙カバーは柔らかいと嬉しい
・平積みはしない
・資料は人に見せるもの。ピシッとして、折れたり曲がったりせずにちゃんと仕舞える

表紙カバー・中身の付け替え・製本性はレールファイルのいいところ、一覧性・仕分け・収納性はハンギングフォルダのいいところ。
この2つのいいところをあわせたらどうなるんだ〜!?
ということで「あったらいいなこんな文具」を作ってみることにしました。

作ってみる

まずはお手本となるレールファイルの形を見る。そして採寸。こんな感じで。

試作1回目

モデリングしたものをPLAで出力。
ところが…くっついた。
隣の壁との距離が近すぎて一体にされちゃった。
カッターで縦に割ろうかな、と思って作業したが、まっすぐ切れないし端面が鋭利なので諦めました。
さきっちょを短くして(少しだけ切り落とした)再出力。

変更前。隙間が狭い。
変更後。隙間が大きくなっている。

試作2回目

くっつかずにいい感じになりましたよ。
スライドして資料も挟めるし…って、よく見たら長さが違うや!

挟めるようにすることに気を取られて、長さが足りないのにここで気づく。
長さを伸ばします。

変更前。全長320mm。
変更後。全長340mm。

試作3回目

ちゃんと伸びた。思ったよりもいい感じ!
ということで少し増産。
もう十分形になっている。
そしたらさらに気になった。
「カラフルでもいいんじゃない?」と。

灰色が変更前、黒が変更後
箱にもぴったり!

試作4回目

色を変えてみた。元気カラー!
そしたら割れちゃった。

これは家にあった「古いフィラメント」を使ったためだろう。
樹脂が詰まりやすかったので保管状態が悪かったと推察。
同じ材質(PLA)と色で、新しいフィラメントを使えば成功するだろうとは思いつつ、樹脂の材質自体を変えてみようかな!と思い…。

試作5回目

試しにPETGフィラメントを使ってみました。
時間はかかるけど丈夫、というかしなりが出るように。
PLAよりもちょびっと柔らかい印象。
そんなに扱うことの無い材料でしたが結構好きかもしれない。

試作6回目

さらに丈夫にしようと肉厚盛りに。やりすぎた。

剛性が出過ぎて逆に使いにくくなってしまいました。
なんでも肉厚にすればいい、わけではないことを知る。
とまあこんな感じで一旦完成。
背表紙にラベリングをすれば上出来だろう。

レールファイルとハンギングフォルダーの好きなとこを合わせてみたら、新しい資料のまとめ方を生み出せた?

モデル自体もまだまだ課題はありそうではあります。
この形で本当にいいの?とか資料のホールド力を上げたいとか。
ともあれ、形にはなりました。
次の改良は実際にしばらく使ってみて。

それにしても、こうやって記録を残すと、うまく行っては失敗して戻る、を繰り返しているのが見えます。
面白いよ、みんなも記録しよう。
「三歩進んで二歩下がる」を経験した数日間の格闘でした。

(written by ささたか)