レーザー加工で車の組み立てキットを作ろう

弊社では、さまざまな工房の運営サポートを行っており、デジタルファブリケーションの知識をもったスタッフが日々利用者の制作をサポートしています。今回は、そんなスタッフが作成した作品の制作過程をご紹介します。
制作したのは、MDF板をレーザー加工して作った車の組み立てキット。市販品では「木製パズル」や「3Dパズル」と呼ばれています。図面の作成から板材の加工まで、一から自作しました。

素材について

素材にはMDF板を使用しています。木材の粉を接着剤とともに成型して板状にした材料で、厚みや素材が均一であるため、レーザーカッターでよく使用されます。今回はホームセンターなどで手軽に購入できる2.5mm厚のものを使いました。

他の材料に比べ値段が比較的安価なのもよく使われる理由で、あるホームセンターでは、1825×915mm、2.5mm厚のMDFが980円で販売されていました。これをレーザーカッター向けのサイズ(450×300mmを12枚)にカットしてもらうと、約1000円。1枚当たり100円以下です。12枚は一度に使う量としては多いかもしれませんが、予備在庫としてストックしておくと重宝します。また、そこまで大量に必要ないという場合、店舗によっては少し小さいサイズで販売されています。

データ作成

下の画像がレーザー加工用の完成データです。完成データを見ると複雑に見えますが、基本的には噛み合わせで作る箱からの応用で製作できます。具体的な作成手順を詳しく説明します。

1.下絵として、モデルとなる車の画像を表示します。
四面図があると作成しやすいです。車の全長が約100mmになるようにサイズ調整をします。

2.ペンツールを使用して側面の輪郭線を描きます。
フェンダー(タイヤがはまる部分)以外は直線で描き、できるだけ少ない直線でざっくりと描くのがコツです。

3.車体上部のパーツを作成します。
車体上部の各辺を計測し、「(車体の横幅 – 5mm) × 辺の長さ」の長方形を描きます。 「- 5mm」は、側面の板厚2.5mm×2枚分を考慮したものです。

4.組み立て時に干渉する部分の長さを調整します。
先ほどのパーツ(a〜f)をコピーし、幅を板厚(2.5mm)にあわせて変更し、車の輪郭に沿うように配置します(緑の四角)。干渉する部分がないかチェックします(青丸部分)。

干渉する部分の長さを変更し、2で作成したパーツに反映します(オレンジ色が調整後の寸法)。

5.はめ込みの凸部分を作ります。
a〜fパーツの側面に、嵌め込み用の長方形(5mm×2.5mm)を作成し、合体させます。基本的には各辺1か所、車体上面(d)など長いパーツには2か所つけましょう。

左図)凸をつけた各パーツ。右図)凸部分の拡大図

6.はめ込みの凹部分を作ります。
車体側面のパーツに、4で作成した凸に対応するように切り欠きを作ります。凹みの幅は、凸の幅より0.3mm狭く、4.7mm幅で作成します(図右の緑色部分)。これはレーザー切断時の切り幅を考慮し、しっかり固定するためです。

左図)凹をつけた各パーツ。右図)凹部分の拡大図

7.タイヤ周りの形状を調整します。
円ツールを作成してタイヤを作成し、それより少し大きな円で車体を切り抜き、フェンダー周りの形状を作成します。タイヤとの隙間が一定になるように調整し、干渉しそうな箇所は削ります。

8.タイヤを作成します。
タイヤは2枚のドーナツ型のパーツを、接続用の「ト」のような型のパーツでとめる構造です。「7」で作成したタイヤの各3か所に切り欠きを作ります。次に、中心に車軸を通すための6.5mmの円を描きます。接続用のト型のパーツを作成します(各辺2.5mm)。

9.左右のタイヤをつなぐ車軸を設計します。
車軸とタイヤと接する箇所には丸型のパーツを取り付けることで、タイヤが回転するようにします。まず、車体の横幅より5mm長い長方形を作成し、タイヤと接する4箇所に切り欠きを作成します。また、丸型のパーツを作成し、切り欠きを追加します。

次に、タイヤが車軸から外れないようにとめるパーツを作成します。8mmの円に、4.7mm×2.5mmの長方形の穴を描画します。

10.車軸のパーツを、本体と接続できるように拡張します。
車軸の上に横軸を追加し、その軸と車軸を左右で連結、車体側面に取り付けられるように凸を両端につけ、下記画像のようなパーツを作ります。 車体にも差し込み用の穴を追加します。

11.車軸間の連結パーツを作る。
10で作成した前の車軸パーツと後ろの車軸パーツをつなぐ、2本の棒を作成します。タイヤ間の距離と同じ長さの長方形を作成、車軸パーツとつなぐための切り欠きを作成し、角を丸めます。

作成したパーツを接続するため、車軸のパーツに切り欠きを追加します。

12.複数個必要なパーツをコピーします。
車体上部以外のパーツは複数個必要です。タイヤ、車軸等のパーツを必要数コピーし、並びを調整、レーザー加工データとして保存します。

レーザー加工・組み立て

完成したデータをレーザー加工機に送り、MDF板を加工します。細かなパーツが多いため、加工後にハニカムテーブルの隙間に落とさないよう注意しましょう。落ちるのを防ぐため、カットラインを数か所ずつ分割し、完全に切り落とさないようにするのもおすすめです。

実際に組み立てるとうまくいかない箇所を発見することもあります。必要に応じて細部を微調整して完成させましょう。

まとめ
以上、レーザーカッターを活用したMDF製組み立てキットの制作手順をご紹介しました。今回はシンプルな形状でしたが、窓やドア、ナンバープレートなどのデザインを追加すると、よりリアルな出来上がりになります。ぜひ挑戦してみてください。