【Studies】Tシャツに刺繍する

こんにちは、デジタルファブリケーション協会の井上です。
ますます冷え込みが厳しくなる中、季節感のない作例でStudies第8弾をお送りします。

どんな機材にも当てはまりますが、データ作りや機材操作に慣れてくると、やがて何か作ってみたくなるものです。以前の投稿(機械刺繍の基礎の基礎)でも書いた通り、自分の名前の一文字を作成するのに半日かけたことに比べたら、今はだいぶ慣れてきました。せっかくなので、日常的にも着られそうなTシャツを作ってみました。

まずはAdobe Illustratorで下絵の準備です。絵描きではないので、ひとまずテキストを刺繍します。フォントはTypekitにもある「Subway NewYork Std」というグラフィティ風のフォントを選びました。Tシャツの胸元に入れることを想定して、テキスト全体の幅を実寸大の25cmにしています。PNG形式で保存して刺繍ソフトに移し、画像をなぞるように縫い方を決めていきます。単色では面白くないので、文末の「Make」の文字を別の色で縫うようにしました。

前回の投稿では主にデータ作成の概要について触れたので、今回は機械の方に触れていきます。まずは作ったデータで正しく縫えるかをチェックします。刺繍枠にオーガンジーを固定して試し縫いします。

味があるといえば聞こえはいいですが、全体的にガビガビしていて下糸も見えてしまっています。これは「糸調子」が合っていないと起こりやすい現象です。糸調子とは、縫う際に糸にかかるテンションの強弱のことで、強すぎても弱すぎても綺麗に縫えません。上糸・下糸の両方で糸調子を調整し、バランスをとります。今回の場合は下糸の糸調子が弱かったため、上糸のテンションに引っ張られて下糸が表まで出てきてしまいました。下糸の糸調子を少し強くして、もう一度試し縫いです。

下段が調整後の試し縫いです。先ほどの試し縫いに比べて明らかに綺麗になりました。データも問題なさそうなので、いよいよ本番です。

試し縫いで使用したオーガンジーのような反物と違い、既製品のTシャツを縫う場合は刺繍機への固定方法も変わってきます。今回は「置き縫い」という手法で、不織布をセットした刺繍枠の上にTシャツを貼り付けて刺繍を行います。下の写真にある「置縫スプレー」という専用の接着剤で、不織布とTシャツを貼り合わせています。スプレー糊のようなものですが、間違っても文具用のスプレー糊などは使わないでください。

位置合わせも十分に確認し、いざ刺繍スタート。今回の刺繍は、およそ10分ほどで縫いあがりました。下の動画は実際に縫っている様子です。

前半の「Shut Up and」は黒のレーヨン糸、「Make」は青のレーヨン糸で縫いました。糸を差し替えれば、同じデータで自由な色の組み合わせが可能です。一つのデータで多様なバリエーションを持てるのは刺繍機ならではの魅力です。

寒さ厳しい年の瀬に半袖のTシャツを作るのも滑稽ですが、これもひとえに「来年に備えるため」。2019年は刺繍機を使った企画を色々出していく予定なので、ご期待ください。

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